結局、お互いにそれ以上点は取れず、3-0のまま9回裏に突入した。


鶴海の最後の攻撃。


打順は巡りよく1番打者からだ。


甲子園まであとアウト3つ。


もう、あと一歩のところまで来ているんだ。


まさか本当にここまで来られるとは思わなかった。


「よし。気合いいれていけ。お前らなら絶対大丈夫だ。練習してきたことを信じろ。いいな?」


「「はいっ!!!」」


おそらく予選最後の円陣になるだろう。


「っしゃ、絶対勝ち切るぞ!!!」


「おう!!!」


その円陣の輪が弾けて解けた。


ナインたちは散り散りに守備位置に走っていく。


「…千隼くん?」


ベンチ前で立ちすくんで動かない千隼くんに声をかける。


すると千隼くんは、ハッとしたような顔をしてマウンドへ駆けていった。