少しの沈黙ののち、千隼くんの口から吐き出された言葉は重たいものだった。
 

「……だってさ、俺の右腕に全員の夢がかかってんだぜ」


野球部の皆の努力、夢、憧れ。


世間からの注目、期待。


いろんなものが束になって千隼くんに襲いかかっている。


私が思っていた以上に、千隼くんは責任やプレッシャーを感じ、戦っていたのかもしれない。


そう気づかされる口ぶりだった。


「まっ、この緊張感も楽しいからいいんだけど」


千隼くんは一転して軽い口調で言い、ロッカールームへと向かって行った。


その背中は大きくて頼もしかった。


でも…どこか脆さを抱えているような気がしてならなかったんだ。