「ついにここまで来たな」


【県予選決勝 鶴海高校 対 北野高校】


球場入り口には、立派な横断幕にそう書かれている。


泣いても笑っても、今日、数時間後には、運命が決まるんだ。


そう思うと、とんでもない緊張で呼吸が苦しくなる。


足がすくんで、球場に入るだけで震えてくる。


「もしかして緊張してんの?」


隣を歩く千隼くんがニヤニヤしながら話しかけてくる。


「そういう千隼くんは、緊張しないの?」  


今日も先発は千隼くんだ。


相手の鶴海(つるみ)高校は、光西と並ぶ強豪校だ。


甲子園出場経験は当然ある。


緊張しないほうがおかしい。


「いや、してるよ。毎試合緊張はしてる」


「絶対ウソでしょ」


冗談半分に突っ込むと、千隼くんはフッと笑って黙ってしまった。