っ!!!!


「勝った……」


その瞬間、翔吾が千隼くんに抱きつきにいった。


呆然と立ち尽くす光西のラストバッター。


キラキラ輝く笑顔でナインたちに労われている千隼くん。
 

この夏の中心人物は間違いなく千隼くんだった。


初回のホームランが試合を決める決勝弾となり、そのうえあの強豪光西学院をノーヒットノーランで抑えた。


「すごい……」 


あまりの凄さに、まるで魂が抜けたようだった。


その場から動けず、皆のように喜びを爆発させることもできなかった。
 

とんでもないことを成し遂げたんだ。


その凄さに支配され、何もできなかった。


ただ、光西学院に勝てて決勝に進めるという事実がポーーっと私の頭を照らしていた。