試合は1-0の硬直状態のまま9回表にもつれこんだ。
得点は、千隼くんのホームランの1点のみ。
いつ試合がひっくり返るか分からない緊張状態だというのに、千隼くんは強力な光西打線をノーヒットに抑えていた。
もしこのままノーヒットなら、とんでもない快挙だ。
見ているだけの私がこんなにソワソワしているんだ。
当の千隼くんは今どういう心境なんだろう。
ベンチから駆け足に出てきた千隼くんと翔吾は、何か笑顔で話をしている。
まるでいつものじゃれ合いのような、そんなリラックスした雰囲気を感じる。
「アイツらのメンタルきめぇな」
途中までつまらなそうにしていた赤坂くんたちも、食い入るように試合を見つめている。
そして、最終回が始まった。



