背筋を真っ直ぐ正し直立、グローブを正面から真横にスライド、位置は他の選手より胸から離した位置。


1度真横を見、左足を少し後ろへキック、グローブを真っ直ぐ捕手へ向けてから右腕を大きく振る。


パァァンッ


まるで脳天を突かれたような衝撃だった。


「ナイスボール!!」


堀田くんの返球を捕る爽やかな笑顔。


「似てる……」


今のフォーム…朝陽くんに似てる…。


朝陽くんは、形容するとすれば“上品な”投げ方をしていた。


投手に対して上品なんて言葉を使うことなんてないけど、朝陽くんだけは違う。


朝陽くんだけの独特で上品なフォーム。


それを今、望月くんがしていた。


7年も前の記憶だ。


気のせいかもしれない。


でも……。


あれは間違いなく朝陽くんだった。


朝陽くんが帰ってきた…?。


私との約束を守るために帰ってきてくれたの…?


「―千隼の――」


違う。


違うよ、私。


あれは望月くんだ。


朝陽くんじゃない。