未完成の心。



── 涙唯side ──



なにか気配を感じる。



ぱっと目を覚ますと、涙羽も目を覚ました。



「誰か来る。」



涙羽のその言葉に頷き、屋上の扉の方を凝視する。



ガチャ



「いたー!!!」



案内してくれた男の子は私たちの方を指さしながら叫んだ。



「ほんとだ!」



男4人はこっちに近付いてきた。



「あなたたちのことを調べさせていただきました。」


なーんだ。そのことか。



「情報なんて出るわけないでしょ。」


私がそう言うと、男4人はびっくりした顔でこっちを見た。


私は世界1のハッカーで涙羽が世界2のハッカー。
2人の情報は私たちによって厳重にロックされてる。


「おまえら……気に入った。黒狼に入れ。」



…………



「「ばかなの?」」




どうやら私と涙羽が思ってることは同じみたい。




「私が入るとでも思った?」
「暴走族なんかに興味無いから。」




それにかっときたのだろう。
うるさい男は殴りかかってきた。



でもそれを私たちは素早く避ける。






「やめなさい、天馬。」



止めに入る真面目そうな男。



「ごめんね〜?天馬ったら短期なんだから。」



案内してくれた男の子が申し訳なさそうに言った。



「大丈夫よ。」
「それより!僕達自己紹介してなかったね〜!僕、花鳥響輝!黒狼の幹部ね!」



天馬も我に返ったのかそっぽ向いてしまった。



「夜長怜。黒狼の総長だ。」
「秋道透也です。黒狼の副総長をやってます。」



興味ないのにいきなり自己紹介を始める男ども。



「天馬、自己紹介。」
「ちっ、八雲天馬。」



それだけ聞くと、私たちは立ち上がって扉の方に向かった。



「おい待て。」



出ようとしたとき、怜が手首を掴んできた。

全身に鳥肌が立つ。


「触んな。」



今日でいちばん低い声を出した。




ぱんっと手を振り払ってあいつらの方に顔を向ける。




「なんでそんなに私たちの心の中に踏み込んで来る?」
「それは……気になるから?」



私は自嘲気味に笑った。




すると、いきなり怜が手を伸ばしたかと思えば涙羽のフードをとった。



「っっ!!眩しいっ!!!!」
「涙羽!!」


怜を思いっきり殴った。



数メートル吹っ飛んだ総長を見てほか3人は呆然としていた。




「涙羽大丈夫?」
「ええ。ちょっとびっくりしたくらい。」
「お前ら、」



男3人の方を睨みように見る。



「次手出したら容赦しないから。涙羽行くわよ。」
「うん。」



私たちは屋上を出て、教室に向かった。