「関西弁とか話してて可笑しくなるし、そもそも親しくもないのにいきなり好きって意味不明。怖くて付き合えない」

はははは、と軽い声が響き、一つの恋が終わりを告げた。

「あんなん言われると思えへんかった」

カラスの鳴く声を背に受けて、無意味にスマホをいじりながら、先ほど突きつけられた真実に頭がくらくらする思いで家路に着く園村やよいの足取りは、やはり鈍い。
背景設定の土手、その横を流れるのが川と言うのもなかなかに物悲しさをあおる。
少し、目頭が痛い。
それはそうだろう、失恋した直後でしかも思いやりに欠ける言葉を放たれたのだから、夕暮れの状況も重なって雫も溢れるというもの。
だが時間と共に、フラれたというショックではなく理解のし難い拒否を食らったことが大きくなってきていた。

“関西弁とか話してて可笑しくなる”

滑舌良く、イントネーションも滑らか、さらには心地よく喉仏を震わせたかのような低い声ではっきりと言われた。

何が可笑しい?
どこにウケる要素がある?

まるで、標準語以外の言葉は受け付けませんとばかりに真っ先にぶつけてきた拒否。

「あいつ何言うてん?」

立ち止まって呟く。
粉砕するまでは彼の事を考えて夜も眠れない…とまではいかないまでも、頭の中の大部分を占めていた恋心の相手はもう一方では苛立ちの対象ともなっていた。
標準語だらけの中での関西弁はたしかに浮く。
関西弁だけでなく、方言自体目立つ。
しかたない。