暗闇に紛れ、風のように濠を駆け抜け、揺れる篝火を避けながら、哨戒線を突破した。 城を幾重にも包囲する、徳川の陣の後方へ抜けた後は、中仙道を目指してひた走った。 もう大坂は振り返らなかった。 ただ一刻も早く、上田に着きたいと願った。 幸村を生み育んだ、上田の光と風を全身で浴びたい、ただそれだけを考えていた。