「!」

バドは、目を見開いた。

「我々は、その機体を奪いたい。その為に、新型のノアを、沖縄に送り込む。それに、沖縄は我々元アメリカ軍にとっては、庭のようなもの。何故、かの地で開発などしているかは、わからんがな」

准将はにやりと笑うと、ディスプレイに映るノアの武装予定図を見つめた。







舞台は変わり、沖縄の軍事基地跡。

十五年前、世界を破壊したレクイエムは、日本の地域ではほぼ破壊活動をしなかった。米軍基地以外では。

唯一の例外が、沖縄であった。

民家が基地に近い場所もあり、レクイエムの攻撃で、米軍以外に日本人の死傷者が多数でてしまったのだ。

今は、民家も戦火でなくなり、基地跡だけが残る土地を、武田真也は歩いていた。

日本軍の最終兵器となる…六体目のオリジナルフィギュアのパイロットになる為であった。


フェンスで囲まれた旧市街地の向こうは、十五年前家を焼かれた者達が住む町があった。

日本政府が謝罪を込めて、造った町並みは、とても綺麗で立派であった。

しかし、そんな綺麗な町並みの隙間で細々と生きる人々がいた。

彼らは、日本人であるが…日本人ではなかった。

白人や黒人とのクォーター。


第二次世界対戦時に戻ったように、民族主義が蔓延ることになった日本。

十五年前の勝利を糧にして、人々は増長していった。

しかし、日本人は理解していない。その勝利が、日本軍のものではなく、レクイエムというフィギュアの勝利であったことを。


「コウ。もう帰ろうぜ」

フェンスの向こう…高く繁った草に隠れ、寝そべっている2人の少年。

「いやだ」

コウと言われた少年は、首を横に振った。黒髪であるが、どこか淡い瞳と透き通った肌をした少年は、じっと基地の跡地を見つめていた。

「全くよお〜。ここまでが限界だ!いい加減諦めろよ」

漆黒の肌を持つ隣の少年は、体を回転させ、空を見上げた。

「声がするんだ。あの声が…間違いないよ。僕を呼んでるんだ」

コウは、指で地面の土を抉ると、ぎゅっと握り締めた。