「あんたは、貴重なオリジナル。特別よ」

コアを吸収すると、オリジナルフィギュアの暴走はおさまった。

「それにしても、パイロットは何やってるのかしらね。暴走させるなんて。起動後は、コアの搾取から始めるのにさ」

また機体の中で、肩をすくめると、パイロットの耳に、通信が飛び込んできた。

オリジナルフィギュアが動きを止めたことで、回線が戻ったのだ。

「蕪城卿。申し訳ありません」

司令官の言葉に、パイロットは欠伸をしてから、

「別に、問題はないわ。まだこの子は、赤子だし。それよりも、パイロットの教育をちゃんとしてよね!」

最後は軽くキレていた。

「申し訳ございません」

司令官は、頭を下げた。

オリジナルフィギュア陸奥のパイロットの名は、蕪城睦美。

日本の海の防衛の要であり、テラから恐れられる海の魔女である。

1日の殆どを世界中の海で過ごし、敵の空母や潜水艦を破壊している。

その為、テラの軍隊は、彼女の航路を避け、動きを常に警戒しなければならなかった。

オリジナルフィギュアで、常に活動しているのは、陸奥だけであった。

「久しぶりの陸地で疲れたわ。お風呂に入りたい!」

陸奥は、オリジナルフィギュアを羽交い締めにしながら、格納庫に向けて歩き出した。





(何だ…。ここは…)

オリジナルフィギュアの中で、コウは半目を開け、空を見ていた。

(引きずられている…。どこにいくんだ?)

朦朧とした意識の中、コウはこれから自分がどうなるのか…理解していなかった。

オリジナルフィギュアの最後のパイロットになるということが、どういうことなのか。

(お母さん…)

何故か…母親の顔が、ずっと頭に浮かんでいた。

もう何年も前に死別して、思い出すこともなかったのにだ。

オリジナルフィギュアのユーテラスの中で、コウはゆっくりと目を瞑った。

次に、瞼を開けた時…運命は大きく変わってしまっていることに、彼は気づくであろう。

ほんの数分の安らぎの中、コウは眠った。