春に笑って、君宿り。

スマホに表示される時間は、いつの間にか夜を示していた。

あ、もうすぐ消灯時間だ。

そろそろ枕投げも落ち着いただろうか。
……いや、やっぱり女子の会話が盛り上がってきた頃か。


『天気がいいよ!! そっちはどうかな?』
『シカさん、あんなに近くで初めて見たよ~』
『新撰組について調べて良かった!! 帰ったら雪杜くんにも教えてあげるね!!』


「…………」


あの人が送ってきそうな文章が簡単に浮かんでくる。
わりと、重症。

連絡が来ないのは、楽しんでる証拠だろ。
何よりじゃないか。

って、素直に思えるくらいの器と余裕が欲しい。

本当は。
本音は。

どうして俺がいないのにそんなに楽しめるの。


「……あー、くそ……」


メッセージアプリ、起動。
一番上に出てくる名前、タップ。


『通話を開始しますか?』


別に、いいでしょ。
たまには俺から連絡してみたって。

俺を思い出す暇もないくらい楽しんでるなら、無理矢理思い出させてやる。