最後の質問


放課後、女子トイレで髪を例える。
ただの練習なのに何をこんなに舞い上がっているのだろうか。

トイレを出て音楽室に向かう途中、学年主任の高橋先生に声をかけられた。

「おう、一ノ瀬。指揮者引き受けてくれるんだってな!」

「あ、はい。」

もう話が伝わっているとは。

「それにしても、一ノ瀬がやってくれるとはな。瀬戸から聞いて驚いたよ。瀬戸とは仲良かったのか?」

「えっと、3年間同じクラスなので。」

仲がいいか?と聞かれて戸惑ってしまい咄嗟にでた答えだった。

「あぁ、そうだったか、じゃあ息ぴったりだな!それに、、、」

高橋先生が変な間を置いた。

「なんですか?」
私は首を傾げる。


「ジンクスもあるしな〜?」

そう言うと、高橋先生がははっと冗談めかして笑った。

高橋先生もこの高校の出身者でありジンクスのことをよく知っている。
たしか、ジンクスの話をしてくれたのも高橋先生だった。

「そんなんじゃないですけど、頑張ります!」

私も冗談ぽく笑ってそう答えた。

笑って誤魔化したものの、ジンクスのことを言われてなんだか恥ずかしくなった。
高橋先生は「そうなのか?」と言って笑うと

「まぁ、頑張ってくれよ〜!」

と言って去っていった。

やっぱりジンクスを意識してしまうと恥ずかしい。
私はジンクスのことを考えるのをやめて音楽室に向かった。