「写真撮ろう!」
「アルバム見た?」
「この後のクラス会の集合時間さー!」
「メッセージ書いて!」
卒業式後の教室は賑やかで、常に声が飛び交っている。
「桃花!この後のクラス会くるよね?」
友達に声をかけられる。
「うん!行く!」
瀬戸くんは行くのだろうか。
教室を見回しても、もう瀬戸くんの姿はない。
いつも通り、先に音楽室にいるのだろう。
「うちらこのまま部活の先生のとこ行くんだけど桃花どうする?待ってる?」
「あ、私もちょっと用事あるから、現地で会おう!」
「そっか!じゃあまたあとで!」
そう言って友達と別れ、音楽室に向かう。
音楽室までの道のりもこれで最後。
音楽室に近づいた時、ピアノの音が聞こえた。
入学式のあの日、廊下で聞いたのと同じ旋律。
あの日のように扉の前で曲を聴き終えて、あの日は開けることのできなかった扉をそっと開いた。
好きだって伝えよう。
言わないで後悔するなら言って後悔しよう。
そう決意した。
