あぁ、どうしよう。
私、瀬戸くんのことが好きだ。
もともと瀬戸くんのことを文化祭のあの日からどこかで意識していたと思う。
目で追っていたし、瀬戸くんに笑いかけられるとドキッとした。
でも気づかないようにしていた。
私と瀬戸くんが釣り合うわけがない。
それでも、練習をしていくうちに、質問を重ねるうちに、私は自分の気持ちに気づいた。
瀬戸くんのことが好きだ。
指揮を振りながら急に想いが込み上げた。
目が熱くなる。
この時間が終わって欲しくない。
「どうしたの?」
急にピアノの音が止まって瀬戸くんの声が耳に入った。
「え?」
「一ノ瀬さん、泣いてるから」
気づいたら涙が溢れていた。
「あ、なんか、もう終わっちゃうんだなって思ったら、悲しくて。」
そう言う私に、瀬戸くんが優しく微笑んだ。
「まだ1週間もあるよ」
「え?」
「あと1週間しかないって思うと短いけど、まだ1週間もあるって思ったら長いでしょ。あと1日になってもまだ24時間あるって思えば長く感じるから。」
思い込みも時には大事だよといって瀬戸くんは笑った。
「そっか、そうだね。うん。まだ1週間もある。ごめん!もう一回お願い!」
私は涙を拭いて瀬戸くんに笑顔を向けた。
「うん!じゃあもう一回初めから!」
そう言ってまた音楽室にピアノが響いた。
ピアノの音が心に響く。
