「じゃあ案内お願いね」


 あっという間に時間が過ぎ、約束の放課後となった。


「…わかったよ、すればいいんだろ」


 それから僕たちは学校を2人で回りはじめた。


「…で、ここが理科室」


「へぇー…」 


 別に案内するのはいいんだけど、さっきから僕たちに注がれる視線が痛い。


 まぁ男女で一緒にいるからってこともあるだろうが、なにより木下さんが目立つんだよな。


 木下さん、黙っていれば可愛いから。


「ねぇねぇ、屋上は?」


「屋上?…こっちだよ」


 木下さんを連れて屋上に向かった。


「…ここが屋上」


「うわぁ〜…景色いいねぇ」


 木下さんが大きく深呼吸する。


「…あと2ヶ月でクリスマスだね」


 まだ11月の初めだっていうのに、もうクリスマスの話か。


「君、予定は?」


「…まだわからないよ」


 僕に友達なんていない。ましてや彼女なんて。


 でも、これからできないという保証もない。


「じゃあ私が先約ね。クリスマス、一緒に過ごそうよ」


「…なんで僕が」


「あれ?断るの?」


「わかったよ。…でも、僕に彼女ができたら、彼女優先するからな」


「できないと思うけどね」


「うるさい」


 そんな即答しないで欲しい。


「よし、そろそろ帰るか。ありがとね、案内」


 と、振り返って言った。