「…木下さん、大丈夫…?」


「うん。急にごめんね」


 僕とベンチに座ってそう話す木下さんは、もう普段通りの木下さんだった。


「あのさ、今度は一緒に遊園地行かない?」


「遊園地?」


 僕は、別に行ってもいい。でも、木下さんは…。


「ねぇ、どう?…そうだね、明日の日曜日とかは?」


「…ごめん、行かない」


「なんで?」


「今日の木下さんを見て、行けるわけない。ましてや遊園地なんてハードだし、またさっきみたいなことが起こったら怖いよ」


 僕は木下さんが苦しんでても、何もできない子供。だからもっと怖い。


「私は大丈夫だよ。私、他の惑星から来たからさ、時々過呼吸みたいになるの」


「それでも、怖いよ。だから遊園地は行かない」


「…私からの命令だって言っても?」


「うん、それには従えない」


 僕がはっきりそう言うと、木下さんはベンチから立ち上がり、振り返って僕の方を見た。


「…そっか。じゃあもう私帰るね」


「あ、うん…」


 木下さんは僕に背を向けて、歩いて行ってしまった。


 それから木下さんは、学校に姿を現さなくなった。