遠い星に住む君と

「ねぇねぇ、早くやろうよ」


「何からするの?」


 と、僕が問うと、木下さんは小走りで、可愛いくまのぬいぐるみが獲れるクレーンゲームの前に行った。


 それは、ここのゲームセンター名物の、超巨大クレーンゲームだった。


「これ、君、獲って」


「獲ってって…どんだけ難しいか知ってるの?」


 アームも大きいとはいえ、ぬいぐるみも重そう。持ち上がるかどうかさえもわからない。


「やってみなきゃ、わからないでしょ」


 まぁ、確かにそうだ。僕は千円を両替して、そびえ立つ巨人の前に立った。


 …ただのクレーンゲームなのに、大迫力だな。


 百円を入れて、音楽が鳴る。


「頑張って!」


 ゆっくりと、でも確実にくまに近づく。


 下降ボタンを押し、静かにアームが降りて、くまを掴む。


「お、やった、持ち上がった!」


 いや、ここからなんだよね。


 しっかりと掴んだように見えたアームは、ぬいぐるみが頂点へと上がっていく途中で、半分ほどの力を抜いた。


 ぬいぐるみは重力に負け、落下した。