海であなたが救ってくれました

「なんで逃げるの。俺に会いに来てくれたのに」

「ごめん。あの……それ、この前のお詫びとお礼。お世話になりました」

「……」


　まともに目を合わせずによそよそしくあいさつをして切り上げようとする私に、由稀人くんは次にかける言葉を迷った末に絶句する。
　

「部外者の私が口を挟んですみませーん！」


　由稀人くんと一緒にいた女性が突然フランクに話しかけてきた。
　彼にこれ以上つきまとわないように、なにか文句でも言われるのだろうか。悪態をつかれるのは嫌だなと私は瞬時に気構える。


「私、霧矢と同期の横手 園子(よこて　そのこ)といいます。私からお願いするのも変なんですけど、琉花さん、コイツと付き合ってやってくれません？」

「はぁ？！　横手、なに言ってるんだ！」


　彼女が口にした“コイツ”とは、もちろん由稀人くんのことだ。
　当の本人である彼はあわてて横手さんの発言を止めに入っている。


「アンタの気持ちを代弁したんだけど？　違うわけ？」

「違わないけど。そ、そういうのは、自分でだな……」


　言い争いのような感じになっているふたりだが、横手さんはあっけらかんとしながらもあきれていて、由稀人くんは落ち着かない様子で顔を赤くしている。

　今気づいたけれど、横手さんはかなり男前な性格の女性みたいだ。サバサバしていて度胸も据わっている。