海であなたが救ってくれました

 様子を見に行こうと立ち上がったものの、心もとない格好をしている自分を自覚して急に恥ずかしくなった。
 早く元の服を身に着けなければとあわてて洗濯機のそばへ赴く。

 服はきちんと乾燥できていたので、由稀人くんにひとこと声をかけたあと急いで着替えた。

 なにやら玄関先でブーンという音がすると思ったら、彼が私のスニーカーをドライヤーで乾かしてくれているようだ。


「ごめんな。靴が濡れてるの忘れてた」

「ううん。こっちこそごめん。私が自分でやるから大丈夫」


 しゃがみこんで作業をする彼から、スニーカーとドライヤーを奪い取る。
 短時間では完全には乾ききらないので、生乾きだが途中であきらめることにした。家に帰るだけなら問題ない。


「すっかりお世話になってしまって。……ありがとう」

「最初に言ったけど俺のせいなのもあるから。気にしないで」


 帰る準備が整い、バッグを肩に引っ掛けた私は玄関先でスニーカーを履いてペコリとおじぎをした。


「どうやって帰るの?」

「タクシーでもいいんだけど、電車で」

「じゃあ駅まで送るよ」


 ひとりでも大丈夫だと伝えたが、由稀人くんは(がん)として首を縦には振らなかった。