海であなたが救ってくれました

「俺、料理はしないんで、こんなのしかなくて。ピザ、熱いうちにどうぞ」

「ありがとう。でも由稀人さんのほうがお腹すいてそう」


 自炊をしないなんて、いつもどうしているのだろう。お弁当を買ったりしているのかな?
 体力を使う仕事だから、食生活は大事なのに。


「俺の名前、初めて呼んでくれましたね。なんかうれしいな」


 そんなことで照れられると、こちらも恥ずかしくなってしまう。
 高身長で立派な体格の持ち主なのに、なんだかギャップがかわいい。


「由稀人さんって、私と同じくらいの年齢?」

「俺は二十八です」

「私よりひとつ年下なんだ! 由稀人くん」


 なにがおかしかったのかわからないが、彼は突然ブハッと吹き出すように声に出して笑った。


「年下ってわかると急にタメ口だし。……いや、ちょっと前からそうだったか。酔ってるもんね」

「あはは」

「ていうか、俺もそうしよ」


 ひとしきり笑ったところで、彼はピザをひときれ手に取って頬張った。男性がモリモリ食べる姿は見ていて気持ちがいい。