囚われの令嬢と仮面の男

 なんて浅ましいんだろう。自分が惨めで情けない。

 ひた隠しにした本心に気づき、つくづく自分が嫌になった。

「マリーン? どうした?」

 食べる手を休めていたからか、男が訝しんだ。

「なんでもないわ」と答え、「クリスに頼まれたの?」と同じ質問をぶつけた。

「……悪いが。それに答えるつもりはない」

「そう、やっぱりそうよね」

 問いに対して自身の浅ましさを自覚しただけで、答えはわからずじまいだ。

 朝食を食べ終えて手を合わせる。

 無言でなおも居座る男に視線を送った。顔はこっちを向いている。私のことを文字通り、ジッ、と監視しているのだろう。その空気にいい加減嫌気がさす。

「あなたって暇なのね。私を見張ってる時間がもったいないわよ」

 男は何も答えなかった。無視をされたせいで、私の言葉はひとりごとになる。

 なんとなく不快でため息がもれた。

「だいたいこんなことをして、あなたになんのメリットがあるのよ」

 男はそっぽを向き、少しの間を開けてボソッと呟いた。

「……俺に、じゃない」

「はぁ?」

「今後のキミに……意味をなすからだ」