囚われの令嬢と仮面の男

 けれど、そうでありながらも、私は少しだけ安堵もしていた。

 クリスティーナがお父様のことで、私にやきもちを妬くたびに、ああ、妹も私と同じなんだと思って、惨めな気持ちが払拭された。

 羨ましい、自分だってそうなりたい。嫉妬するのは、なにも私だけじゃないんだと感じて、少しだけ優越感に浸った。

 四歳年下のクリスティーナは、勉学やお稽古ごとの何から何まで優秀で、私よりずっと出来がいい。愛嬌があって社交的で自分に自信もあって、婚約者までちゃんといる。伯爵令嬢としては理想的で、まさに完璧(パーフェクト)だ。

 そんな妹がそばにいて卑屈にならないわけがない。

 あなたが羨ましいってずっと思って生きてきた。

 クリスティーナが私をよく思っていないというよりは、きっとその逆で、私が妹をよく思っていないのかもしれない。

 不仲、と聞いてそうじゃないと否定したのは、表面上だけの話で、本当はお互いがどう思っているのかはわからない。

 だからクリスティーナへの疑念は、私が持つ劣等感の裏返し。仮面の男と通じているのが妹だったとしたら、たとえショックを受けても自分なりに納得できる、そう思っていた。