クリスティーナは私と違い、社交性に富んでいる。既に婚約者がいる上に、何人かの男性と交流もある。
家のことや私個人の趣味嗜好を把握していて、なおかつ外の男性に誘拐なんて突拍子もないことを頼めるのは、妹のクリスティーナしかいないと考えていた。
「妹がそうかもしれないという理由はわかったけど……普段から妹とは不仲なのか?」
不仲、とはっきり言葉にされてすぐさま首を振る。
「全然っ、そんなことないわ! ただ……お父様が話題になるときは、あまりいい雰囲気じゃないから」
「それは……どういう?」
「この間にも少しだけ言ったけど。お父様は私にだけ甘いの。お父様の態度はあからさますぎるから……そのことでクリスが私のことを良く思っていないかもしれないって。……そう、感じてて」
「なるほどな」と相槌を打ち、男が黙り込む。
ーー『お父様って、姉様にだけは甘いわよね』
ふいにあの日の朝に言われた妹の言葉を思い出した。
『姉様だけずるい』という明確な嫉妬心を向けられた気がして、悲しみのなかにどうしようもない歯痒さと申し訳なさを感じ、居た堪れなくなった。
家のことや私個人の趣味嗜好を把握していて、なおかつ外の男性に誘拐なんて突拍子もないことを頼めるのは、妹のクリスティーナしかいないと考えていた。
「妹がそうかもしれないという理由はわかったけど……普段から妹とは不仲なのか?」
不仲、とはっきり言葉にされてすぐさま首を振る。
「全然っ、そんなことないわ! ただ……お父様が話題になるときは、あまりいい雰囲気じゃないから」
「それは……どういう?」
「この間にも少しだけ言ったけど。お父様は私にだけ甘いの。お父様の態度はあからさますぎるから……そのことでクリスが私のことを良く思っていないかもしれないって。……そう、感じてて」
「なるほどな」と相槌を打ち、男が黙り込む。
ーー『お父様って、姉様にだけは甘いわよね』
ふいにあの日の朝に言われた妹の言葉を思い出した。
『姉様だけずるい』という明確な嫉妬心を向けられた気がして、悲しみのなかにどうしようもない歯痒さと申し訳なさを感じ、居た堪れなくなった。



