囚われの令嬢と仮面の男

 右腕に白い清潔な包帯が巻かれた。「ありがとう」と一応、礼を言う。

「ったく。こんな無茶をするとは思わなかった。陶器の皿はだめだな。割れるものは全て撤収する」

「もうしないわよ」

 皿を割った理由を白状すると、男は心底呆れていた。食器類に関しては「木製に変えるか」とひとりごちていたけれど、ミルク瓶に関してはどう対処しようかと頭を抱えているようだった。

「さすがの私でも、瓶を割ったりはしないわ」

「いいや、信用ならないな。今後は三度ここへ来るか……しばらく監視してから帰ることにする」

「監視って」

「ヘマして酷い怪我でもされたらたまらないからな」

「そこまでドジじゃないわ」

 私はむくれながら椅子に座った。男が用意してくれた朝食にありつくことにする。今朝のりんごとパンも良質なもので美味しい。そのうえチーズまで用意されている。

「ねぇ」と男に声を掛けた。

「あなたに誘拐を頼んだのって、妹のクリスティーナじゃない?」

 ベッドに座る男が一拍あけてから口を開いた。

「なぜそう思う?」

 問いに対して、私は自身の考えを述べた。