囚われの令嬢と仮面の男

 眠るまえまで両手足を拘束していた縄がすっかり無くなっていた。何故かは分からないが、あの男がほどいてくれたということだろう。

 とにかく理由なんて考えている暇はない。ここから脱出するルートがあるかどうかを、急いで調べなくちゃいけない。

 ベッドから離れ、真っ先に出口だと思われる木製扉へ走った。金属製のハンドルを掴み、グッと手前に引いたり押したりするが、びくともしない。

 鍵が掛かっているのだ。内側にある鍵穴を見つめた。室内(なか)からも外からも鍵を使って施錠するタイプのものらしい。

 仕方なく、狭い室内を自由に歩き回ることにした。

 出口とは別の扉をふたつ見つけ、手前に引いた。ひとつはトイレでもうひとつは浴室だった。

 暗く狭いなりに人ひとりが生活できる造りになっている。

 トイレと浴室にそれぞれ小窓を見つけた。開きっぱなしの窓から外を確認するが、どうやら地下らしく、光はとんと届かない。窓は石の壁と対面していた。

「誰かーっ、助けてーっ!」

 力の限り声を振り絞ってみるけれど、何も変化はない。反対に外の音も聞こえない。