囚われの令嬢と仮面の男

 そのことから、お父様も人知れずに抜け出したのだろうと判断した。

 偶然、屋敷に忍び込むことになった少年は、抜け穴のようになった緑の塀を見て、探究心がうずいたと言っていた。

「キミはこの家の子だよね。さっき、そこでこれを拾って……」

 少年は庭の地面を指さしていた。そこに落ちていたというブローチを受け取り、あ、と目を見開いた。紫水晶の綺麗な、ママのアクセサリーだった。

「ありがとう」

 ママがうっかり落として行ったのか。それとも要らなくなって捨ててしまったのか。真相は定かではなかったが、代わりに私が持っていることにした。

 少年は名前をイブと名乗った。イブ・アラン。

 私とは違って、身寄りのない子供たちが集団で暮らす施設に住んでいるのだと話してくれた。

 六歳の私に対して、イブは九歳でお兄ちゃんのような存在だった。

 荒れた生垣が元通りに修繕されるまで、私はイブに連れられて屋敷の外を探索して遊んだ。

 身の回りのお世話をしてくれる侍女に、最近ひとりで遊ぶのが楽しいのだと嘘をつき、数日間、子供同士で遊べる自由を満喫した。