囚われの令嬢と仮面の男

「ママのことは事故でも、九歳の少年に関してはお父様が命令して殺させたんでしょう!?」

「うるさい、うるさい、うるさいっ! 黙れぇ!!」

 お父様の手に迷いはなかった。花壇の側に置いていたシャベルを引っ掴むと私へ射抜くような目を向けた。

「ここでおまえが死んでも……っ、外から侵入した者に殺されたと言えば、なんの問題もない。私はここで、おまえの亡骸(なきがら)を発見するだけだっ!」

「いや……っ、いやぁぁっ!!」

 重いシャベルを振りかぶり、お父様が私へと駆けてくる。

 今度こそ終わりだと思った。さっきまでの恐怖が抜け切らず、私の足はすでに立つことすらできないでいた。絶対絶命の状況で逃げることも叶わない。

 助けて、と心の中で叫んだ。咄嗟に思い浮かんだのは私の侍女だったマーサの顔だ。

「っすけて、助けて! マーサぁっ!!」

 ギュッと目を瞑ったと同時に、すぐ目の前で鈍い音がした。私が殴られた(それ)じゃない。

 なにが起こったのかわからずに、恐々と目を開ける。

「……っあ、あ、」