囚われの令嬢と仮面の男

 心底どうでもいいという口ぶりでお父様が嘆息をもらした。

「お父様がママを埋めた夜。切られた生垣の向こうから目撃していたのがイブだった、そうでしょう? だからあの子を」

 お父様は静かに立ち上がると「生垣」と呟いた。

「おお、そうだった。生垣だ……!」

 今言った私の問いなど丸っ切り無視をして、すぐ側の生垣に向かって歩き出す。持っていたランタンを掲げてお父様が緑の壁を調べ始めた。「私はな、マリーン」と声を掛けられる。

「一度寝ついたものの、なにか嫌な胸騒ぎがして裏庭(ここ)へ来たんだ。やはり……。私の思ったとおりだった」

 お父様のランタンが、既に切られた生垣を照らし当てた。明かりを寄せて、どの程度切れているのか念入りに調べている。

「これは……。おまえがやったんだな?」

 いつにも増して低い声だった。背筋がゾワッと粟立ち、私はブンブンと首を振った。ち、と慌てて発した一音が喉につっかえた。

「違うわっ! 私が来たときにはもう、」

「言い訳をするなっ! おまえもローラと同じで私を置いて出て行こうと考えているのだろう!? あの男と一緒に!!」