囚われの令嬢と仮面の男

「姉さんと仲の良かったあの侍女が関係していたのは衝撃だけど……きっとなにか事情があるんですよね」

「ええ。彼を助けることができたらマーサに会いに行って、直接本人に聞くつもりよ?」

 マーサの動機に関しては、あらかたエイブラムから聞いていたが。過去にあった銃殺事件を今さら話題に出す気にはなれなかった。

「姉さんは。その……エイブラムさんを助けたら、そのあとどうするつもりですか?」

「どうするって?」

「彼と……結婚するつもりですか?」

 弟の口調が弱々しい。私の今後を心配しているのだと思った。

「そうね。そうしたいのは山々だけど。家同士のことだし、お父様はきっと許してくれないわ」

「……そうですね」

 先に降りた階段から一階(グランドフロア)を突っ切り、玄関(エントランス)ホールへ向かう。

 絵画や彫像などを飾る画廊の向こうから、見慣れたふたつのシルエットが歩いて来る。顔が強ばり、足が止まった。

「……なんで?」