囚われの令嬢と仮面の男

「今夜はゆっくりとお寛ぎください」とさっきよりも強い力で手を引かれた。

 ホールを去るとき、妹たちと目が合った。クリスティーナもアレックスも首を傾げ、心配そうに私を見ていた。

 あのときは大人しく部屋へ引っ込むしかなかった。

 すぐにでも地下貯蔵庫を確認しに行きたい気持ちに駆られるのに、そうできない雰囲気がありありと漂っていた。

 そしてそれは二日経った今でも続いている。私がなにかひとりで行動しようとすると、侍女たちが即座に付き従う。

 彼女たちは私の行動範囲を抑制する役を担っていた。つまりは監視されている。侍女というよりはお目付役だ。

 一度エイブラムにしたように、侍女を出し抜いて地下貯蔵庫まで走ったこともあった。昨日のことだ。

 貯蔵庫の扉の前には見張り番の男がひとり立っていた。

「お願い、彼を出して! いるんでしょう?」

 ちゃんと生きているのかどうか、彼の安否も気になっていた。

「い、いけません、お嬢様!」

 見張り番は、じゃっかん怯えた瞳で首を振った。そこへ侍女たちが追いついた。