囚われの令嬢と仮面の男

 ーー『キミは自分を卑下して、先入観で周りの奴らを見ている』

 当たってる。どうせ私なんて、とできない自分を可哀想に思うことで、私は私をなぐさめていた。

「ありがとう」

 家族の想いに胸を熱くしながら、私も少しだけ泣いた。妹に関しては彼の共犯者かもしれないと疑ったことを、改めて申し訳なく思った。

「今夜はもう部屋で休むといいわ。お腹が空いているだろうから、使用人になにか作らせるわね」

「あ、でも。ちょっと待ってっ」

 私は焦った。私が今しがた降りた馬車より遅れて到着する馬車を待ちたかった。使用人と共に強制的に連れられるエイブラムを。

 お父様は彼を地下貯蔵庫に連れて行くよう命じていたから、それをこの場で阻止したいと思っていた。

 そんなことはつゆ知らず、お母様が手をパンパンと叩いて「マリーンの侍女たちをここへ!」といくらか声を張り上げた。

 程なくして、マーサではない二人の侍女が現れた。それぞれがメアリーとスーザンと名を名乗り、彼女たちの名前を一応は頭に入れる。

「……あの、お母様。マーサは?」