婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています


「ブルーバーグ侯爵令嬢。テンネル侯爵家が次男スティールと申します。ぼくと踊っていただけませんか?」

 テンネル侯爵家?
 驚きに目を瞬かせていると彼からフッと微苦笑が漏れました。

「やっぱり、覚えてませんよね?」

 図星を刺されて返答に困りました。会ったのは一回か二回くらい? 
 挨拶をした程度で顔を覚えるには機会も少なすぎました。
 確か、隣国に留学されたと聞いていたのですが、一時的に帰国されたのかしら?

「すみません」

「いいんですよ。挨拶程度では覚える暇もなかったでしょうからね。踊っていただけますか?」

 黒縁の眼鏡の奥から覗く穏やかな青い瞳。波打つ栗色の髪。人目を惹く容姿ではないけれど、人柄の良さを現わしているような柔和な面立ち。

 エドガー様とは性質が正反対な印象を受けました。