婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています


「ローラ。俺は……」

 もう限界。

 私はガバッと立ち上がりました。


「どうしたの? 急に」

 突然の意味不明な行動に呆気にとられるレイ様。私の胸中など知る由もない困惑した表情。

 初めて自覚した気持ちを消化できない私。

 話の最中に席を立つのは不敬だわ。咎められるかもしれない。何よりもレイ様に失礼なこと。
 ほんの少し残っている理性が囁きかけますが、それもすぐに消えていきました。

 これ以上は、私の気持ちが持たないわ。

「ローラ?」

「申し訳ありません。時間がないので、これにて失礼させていただきます」

 やっとの思いで声を絞り出し、深々と頭を下げて踵を返すと脱兎のごとく駆け出しました。


「ローラー」

 背中にレイ様の悲痛な叫び声が聞こえたような気がしましたが、それどころではありません。
 
 
 レイ様のことが好き。

 自覚した気持ちを持て余し、彼の元から逃げ出す事しか考えられませんでした。