黒縁メガネのレンズごしに、私は若林くんの横顔を見つめてる。


 ちょっと胸がドキドキしてきた。

 私は授業中だということを忘れ、彼に見入ってる。


 グラウンドに視線を向け、肘を机に乗せたまま左手の親指を口元へ……

 唇に軽く指先を押しつけ、爪を優しく噛んでいるのだ。


 その、姿が……

 赤ちゃんみたいで、愛おしく可愛い。


 教室の中で一番後ろの席に座る私と、隣の若林くん。

 私の他に誰も気づいてない、彼の癖。


 無心で親指の爪を甘噛みするヤンキー男子。

 私はその横顔を、ずっと見つめてる……


 威圧的な外見とキツイ言葉づかいを知ってるので、ギャップが激しい。

 だから、余計に愛おしく感じてしまう……


 などと心の中で思っていた時、彼が爪を噛むのを突然止めた。


 私は急いで前を向き、黒板を見つめて知らん顔。

 その姿を、ヤンキー男子が睨むように見つめてくる。



 まさか、バレてませんよね……