私の異変を感じて、若林くんがカーストの子たちと話をするようになった。

 黒髪清楚の子が原因とカラオケ店で聞き、もうやるように言ってくれたんだって。

 その帰り、店内でもめ事に巻き込まれ喧嘩に……


 心は優しくても、ヤンキー男子だもんね。

 引けないことだって、きっとあるよ……


 昼休みで教室にクラスメイトがいる中、私は窓際に一人で立っている。

 束ねられた遮光カーテンの裏に隠れ、グラウンドの方角に顔を向けて涙を流していた。


「私みたいな地味子のために……どうして、そこまで……」


 あふれ出る涙を、手の甲で何回もふきとるけど止まらない。

 メガネを外して、顔を上げても涙が頬を伝って床へポトポト落ちていく。

 悲しさと切なさ、愛しさが入り交じってヤンキー男子への思いが強くなっていた。


 こんなにも、一人の男子を好きになったことなんて今までない。

 誰かのために、たくさんの涙を流したのも今回が初めてだった。


 無期限の停学という言葉に不安を覚えながら、私はグラウンドを見つめる。


「ぜったいに、もどってくるよね……若林くん……」



 小さな声でつぶやきながら、私も覚悟を決めた。