翌日の朝、隣の席に座るヤンキー男子は姿を見せない。

 いつものように、遅刻かなって想像してた。


 嫌な視線が、突き刺さるように私へ向けられているのが分かる。

 うつむいて、顔の表情が見えないように前髪で隠しながら自分の座席に座っていた。


 二時間目の授業が終わって、彼が姿を現す。


「若林くん……」


 思わず小声でつぶやいてしまったけど、ヤンキー男子は教室に入ってきたばかり。

 いつものように、私の前を通って自分の席へ座る直前、彼が声をかけてきた。


「よっ、元気でやってるか!」


「……」


 視線を反らしたまま、私は無言で頷いて見せた。

 離れた場所で、黒髪清楚系の女子生徒が手で壁をバンバン叩いてる。

 挨拶された私を見て、無言だけど反応を返したのが気に入らないらしい。


 教室の雰囲気が、いつもと違うことに彼は気づいた。

 周囲を見回し、何か考え込んでるみたい。


「そっか、分かった……」


 短くつぶやいた後、ヤンキー男子は私に話かけてくることがなくなった。