ヤンキー男子の彼は気づいてない。


 授業中、机に額を付けたまま居眠りする姿をたまに見かける。

 気持ちよさそうに寝てるんだけど、ごくたまに……


 親指の爪を甘噛みしてる時がある。


「わぁ……」


 周りの席に座る同級生に聞こえない小声を思わず出してしまう。

 だって、その姿は赤ちゃんみたいだから……


 茶髪にピアス、体も大きいけど寝顔は天使。

 相手は寝込んでるので、授業中だけど先生に見つからなければガン見してる。

 そして、私は顔をニヤニヤさせていた……


 口をモグモグさせながら、指先の爪を甘噛みするヤンキー男子。

 隣の席で、うっとりしながらその様子を見つめる私。


 相手は寝込んでるから、みつかるリスクは無い。

 グラウンドを見つめながら、無意識に爪を甘噛みしてる彼の姿も好きだった。


 どうしてなのか自分でも分からないけど、最近、若林くんがすごく気になってしかたない。

 威圧的な外見のヤンキーだから、本当は避けたいはずなのに……


 入学初日には気づかなかった、この気持ち。

 でも、私は絵に描いたような地味子だ……