「だって、本当のことだわ」

 リゼットはシャルロットに諭されて不愉快げに眉を顰める。

「現に、平民の血が混じるお姉様は王女なのに全然魔法を使えない、落ちこぼれじゃない」

 その言い方には、明らかな嘲笑が混じっていた。

 エリス国では魔力の強さは神からの寵愛の深さを表わすとされる。
 魔力がほとんどなくずっと魔法を上手く使えなかったシャルロットは、その点で神から見放されている存在と言いたいのだ。

 そのときだ。

「なんだと? 娘、今なんと言った?」

 地を這うような低く怒りに満ちた声が聞こえた。

「今の声はなんだ?」

 突然の第三者の声に、その場にいる面々が辺りを見回す。
 次の瞬間、シャルロットの背後に閃光が走り、あたりに突風が吹いた。

「これは……」

 エリス国王が驚愕の表情を見せる。そこには、身長の倍ほどもある銀色の竜がいた。