建国二十周年の祝賀パーティーの日はあっという間にやってきた。

 クリスタルで作られた巨大なシャンデリア、金箔の貼られた角柱、一面に精緻な絵画が描かれた壁と柱……。ここは、現ダナース国において最も色濃くレスカンテ国時代の名残を残す場所だ。

(ほんの二十年前まで、ここで毎晩のように宴を開いていたのね)

 シャルロットは中二階にある覗き窓から階下の煌々と煌めく大ホールを窺い見て、眩しさに目を細める。既に、会場には多くの人々──ダナース国内の貴族はもちろんのこと、諸外国からの来賓も集まっている。

「準備は問題ないかしら?」
「全て予定通り整っております。今、おもてなしのウェルカムドリンクを配り始めているところです」

 ちょうど近くを通りかかった女官長に声をかけると、女官長はこくりと頷いた。

(よし、大丈夫そうね)