「はい、そうです。わたくしはこれくらいしか使えません」
「それだけでも大したものだが」

 シャルロットはちらりとこちらを見ると、小さく微笑む。

「そんな風に言っていただけるのは、ここがダナース国だからですね」

 その寂しそうな表情をみて、これはエリス国の王女としてはあまり魔法が上手く使えないと見なされるレベルなのだろうと理解した。

 美しく色づいた紅茶が、先ほど手渡したパンケーキと供にエディロンの前に置かれる。シャルロットは自分の前にも紅茶とパンケーキを置くと、そのパンケーキを手で千切って一口食べた。

「美味しい」
「それはよかった。そんなものでよければ、あなたが孤児院に行く際に事前に言えば用意してもらえるように厨房の者に伝えておこう」
「本当ですか? ありがとうございます! 帰り際に商店街を注意して見てみたのですが、パンケーキって意外と町では売られていないのです」

 シャルロットはパッと表情を明るくする。