シャルロットがこの孤児院を訪れたきっかけは二週間ほど前に遡る。
 国の状況を知るのと同時に婚約解消後にどうやって生計を立てるかの情報収集のために訪れた城下で、たまたまこの孤児院を見かけたのだ。

(それにしても、ダナース国は社会福祉が整っているのね)

 恵まれた者がいる一方で、貧しい者がいる。それはここダナース国でも同じなのだが、ダナース国はシャルロットがこれまでの人生で関わったどの国よりも救済制度が整っているように感じた。

 エリス国では貴族や王族が孤児院などを慰問することは『恵まれたものの義務』とされていた。
 過去のループで他の国に嫁いだこともあるが、どの国でもその考え方は共通していたためシャルロットは色々な国の孤児院を訪れたことがある。その経験を踏まえた上で、ダナース国の福祉制度は整っていると思った。

 現に、こういった孤児院の子供達ですらしっかりとした教育を受け、将来の夢を描くことができるのだから。