境界線を越えたくて

「水沢さん!」

 大股一歩。長いこと俺が埋められずにいた距離は、たったの一歩だった。

「水沢さん、ごめん!」

 彼女を抱きしめそう言えば、胸元から聞こえてきた掠れた「うん」。ググッと腕に力を込める。

「俺も、俺も水沢さんが好きなんだ……」

 もう失いたくない、離したくない。存在もしない境界線を勝手に作り上げるなんてこと、もうしない。
 三年間の愛を今彼女に伝えたい。

「ずっとずっと好きだったっ、中一の頃からずっと。でも勇気がなくて話しかけられなかったんだ。本当はいつも水沢さんの姿を探していたし、目が合う度いつもドキドキしてたっ。だけどっ」

 見送り続けた告白のタイミング。いつの間にか時間だけが過ぎ去り離れることが決定し、臆病になっていった。