何を言っているんだ早坂くんは。
「マジ?そうなの?彼氏ってこと?」
「彼氏ではないけど、“私その人の物だから誰も私に触れないで”って言ってた」
「はあっ?」
隣で里奈が「あらま」と両手で口元を隠した。
口から出まかせの早坂くんに「ちょっと、何言ってるの」と詰め寄った。
すると悪びれる様子もなく「最近ずっと無視された仕返し」と意地悪く笑ってみせた。
「子供じゃん」
「お互い様だね」
背の高い早坂くんを下から睨むと、ポンと肩に手を置かれて私にしか聞こえないように耳元で「今日の夜、招待。絶対無視すんなよ」と言った。
私の顔はまた赤いんだろう。
囁かれた右耳を手で押さえた。
お友達の方を振り返った早坂くんは
「なんて、冗談」
と、さっきの出まかせを撤回した。
「何だよ早坂。くだらないジョークだな」
「ハハ。でも好きな男は本当。だから諦めろ」
早坂くんの言葉を聞いた男子生徒は、背中を丸めて教室に入っていった。



