「大丈夫か?あか…国見さん」
走ってきたのか、早坂くんの呼吸が少し荒い。
その姿を見て
里奈が思い付いたように「あ、私そろそろ戻らないと」と、わざとらしく手を叩いて椅子から立ち上がった。
「じゃーね、あかり」
どこか楽しそうに保健室を出て行った里奈。
カラカラと扉が閉まると、2人だけの保健室に一瞬沈黙が流れる。
「ぶっ」
突然吹き出した早坂くんに、私は邪険な顔をした。
「なに笑ってるの」
「アハハ」
「最悪。ほんと、やだ」
私は手元にあった自分のハンドタオルを早坂くんに向かって投げた。
「ごめんごめん、怒んなよ」
床に落ちたハンドタオルを拾って私の目の前で立ち止まった早坂くん。
「怪我、大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「めちゃくちゃ怒ってるじゃん」
「だって早坂くんが賭けみたいなこと言うから私、…」
「あれ。もしかして顔も怪我した?」
早坂くんは私の抗議を遮るようにそう言うと私の左頬に顔を近付けた。
至近距離で私の顔を確認する早坂くんとの距離が近くて、息が出来ない。
何だこの状況は。
ちゃんとメイクしておけば良かった。
「土か」
早坂くんのジャージの袖が左頬を擦る感触がした。
いつもはヘッドホンから聞こえる早坂くんの声が、鼓膜にダイレクトに届いて妙な汗をかいている。



