「カッコよかったみたいだね、あかり」
保健室で、擦りむけた膝の消毒をしていると付き添ってくれた里奈がクスクスと笑いながらそう言った。
1組の国見あかりが決死のスライディングでチームのピンチを救った、なんて噂になっているらしい。
「笑い事じゃないよ…卒業前に恥ずかしすぎる」
保健室の先生はお昼まで不在のようだから、このまま休んでいようかな。
あの後、結局怪我で戦線離脱した私。
それでも早坂くんが残った相手チームの2人を倒して見事勝利を掴んだ。
なんてヒーロー気質な男なんだ。
「でもさ、あかりと早坂くんってどういう関係?ざわついてたよ、皆。ただならぬ空気だったって」
「ただならぬって…」
スライディングキャッチをした私を起こしてくれた早坂くん。
そのタイミングで何処からか「あかりー!?大丈夫?」と駆け寄ってきた里奈は早坂くんと私を交互に見た。
「えーっと。保健室連れてってくれる?」
早坂くんは里奈に愛想良くそう言ってコートに戻っていった。
「私、あかりが早坂くんと喋ってるの3年間1度も見たこと無いよ」
里奈とは1年の時からずっと同じクラスだった。
確かに、学校では早坂くんとは一切絡まなかったから里奈が不思議に思うのも無理はないかもしれない。
「同じ中学だっただけだよ」
「えー?本当に?あやしいんだけど」
「あやしくないよ。そんな事より里奈、戻らなくていいの?」
今日の体育の授業は2時間だから、まだ折り返しにもなっていない。
「んー、私もここであかりとサボっちゃおっかな」
「私は怪我だから、サボりじゃないの」
「アハハ」
1人になる私を気遣ってくれてるんだろう。里奈は優しい。
保健室も今日が最後かなーなんて思っていると、扉が勢いよく開いた。
入ってきたのは早坂くんだ。



