スキャナーの上から手紙をどかして、今度はキーボードにデータを打ち込む。

「えーと、奈木、奈木……」

綾南男子校の、バスケ部、奈木……

ピピピピ……

出た。

ターゲットは、黒いスポーツ刈りの男子だ。

うっそマジ!? 身長180ってどんだけ……高……

趣味はバスケで特技もバスケの、あ、一年生でスタメンなんだ。へぇ。

スポーツができて、げ、学年で十番以内とか、すご。

相沢さん、いいシュミしてんじゃん♪

好物は焼きそばパンね。

一年三組の、ふむふむ、机の位置は窓際の、一番後ろか。

なるほど。

ほかにも気になるデータを調べあげた私は、もう一度引き出しを、引くんじゃなくて押した。

スクリーンのライトが落ち、アームやパネルが収納される。

コンコン、と、その時。

「ユリ、なにやってるの? ご飯できたわよ?」

ママが呼びに来た。

「はーい、すぐ行くー」

心の中で、なにやってるの? じゃないよと笑っちゃう。

あたしのママは、実はスパイなんだ。

だからあたしもスパイの娘。

まあぶっちゃけ、情報の泥棒みたいな?

だからあたしが部屋でなにやってるの? なんてわかってるくせに。