せ ん にゅ う

もう最悪とあたしは愚痴てやった。

綾南からだいぶ離れた、とあるビルの屋上、あたしと彼はコンクリートに座っていた。

「なんか思った以上にどたばたしたしー、もう最悪だよぉ」

「お前がグズなだけだろ」

「げっ。っていうか、アンタも助けるならもっと早くしてよ」

「しょうがねぇだろ」

と、彼は深く被っていたキャップを取る。

意地悪な笑み、切れ長の目、ちょっと長い黒髪の男――幼馴染みのルイは言った。

「まさか侵入者がお前とは思わなかったんだよ」

「ったくもう、ンなこと言って、食券に目がくらんだんじゃないの?」

「どこぞの食い意地張ってるバカ姫に言われたかねぇ」

「なんだとー!?」

軽くふざけて振り上げたげんこつを、下ろす。

彼には、一応、助けてもらったし。

「ありがとうルイ。おかげで捕まらずにすんだよ。サンキュ」

「ん、まあな」

そうして今度こそ、あたしのミッションはコンクリートした。