せ ん にゅ う

彼は座ったままのんきに外を眺めていて、あたしが真横に立って初めてこっちを見た。

「なに、アンタ。俺になんか用?」

うわ、めちゃくちゃクール。

やっぱりイケメンは適度にクールでなきゃ……いや、それはあたしの好みだけど。

ポケットから相沢さんの手紙を取り出す。

あれだけ運動してもシワひとつつけてないあたし……

ひょっとしたら運び屋の才能ありかも?

奈木くんへ差し出す。

「アンタのこと好きな子から、預かってきた。きちんと受け止めて、きちんと返事したげて」

無言のまま、受けとる彼。

封筒のデザインだけからでも、これがなんなのかわかったんだろう。

とても神妙な顔をしていた。

あたしは、窓のサッシに足をかける。

鞄の中から、もうお馴染みのリングを取り出し、窓の上のコンクリに打ち込む。

「じゃっ、ちゃんと届けたからね!」

「お、おい!」

そうしてあたしは、窓から飛び降りた。