せ ん にゅ う

「それで、奈木くんはどこ?」

『うん~、教室にいるみたい』

「え、教室に?」

『うん、奈木くんは参加してないみたいだよ、ユリちゃん捕獲』

マジですか……

余計な時間食っちゃったなぁ……

「よし、じゃあ早速行くわ! 早く行って早く脱出しなきゃ」

『がんばってー♪』

まったく、マリは他人事みたく……。

階段の手すりに腰かけて、一気に滑り降りる。

彼の教室は三階だから、すぐそこだ。

みんながみんな教室の外なんかに走り回っていたせいか、わりと廊下も教室も静かだった。

一年三組のドアを、開ける。

教室の中に残っていた数人が、落ち着いた目であたしを見た。

その中に、奈木くんも。

なるほど、頭よくってスポーツできる以上に、クールだわ。

奈木くんのとこへ行くまでにいる何人かが、あたしを見てざわめく。

あたしは釘を刺した。

「鼻血流したくなかったら、かかってこないほうがいいよ。強いから、あたし」

そして、奈木くんのところへ進む。